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※TOASSについて※
・連作の場合まずブログに仮UPし、ある程度話数が溜まってから1ページに纏め、Novelに本UPします。
(♪) が付いているSSは、まだNovelからリンクが繋がっていない (=本UPされていない) 作品です。
・単品はブログを経由せず、そのままNovelに掲載致しますのでご注意下さい。

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奪え、奪え、全てを憎め!2 ...20070513 * 他TOASS

需要は少ないようですが、早速書き上げてしまいました続き。
次のヴァン編で完結予定です。相変わらず暗ぁー(汗

―――不気味な子供だった。


俺、ガイ・セシルがファブレ公爵家に出入りするようになってから数年の月日が流れたが、顔を合わせた当初からずっと、子供は変わらず不気味であった。

何せ同じ年頃の子供達と同じようには我侭も言わない、泣かない、そして―――決して無邪気に、明るくは笑わないのだ。笑ったと思っても、それは冷笑や嘲笑。思わず背筋が凍る錯覚を受けるような、冷たい眼差しでの微笑だった。

それは、誰がどう見ても10にも満たない子供が浮かべるような物ではなかっただろう。当然使用人達は挙って彼を敬遠し少なからぬ恐怖を抱いたし、彼専属に雇われた家庭教師達は、いっそ従順なほど謙虚に教えを乞われているにも関わらず、直ぐに耐えられなくなって暇請いを訴える程だ。

そんな彼を恐れもせず惜しみなく愛情を注げたのは、彼の実母ただ一人だけだった。父である公爵すら得体の知れぬ闇を持つ息子を、何処か恐れている様子で。しかも何かその原因に思い当たる節でもあったのか、次第に公爵は息子に対して負い目を感じているような態度を取るようになり、哀れなほど痩せ衰えていっていたのだ。


だがそんな周囲の事など気に留める価値も無いとばかりに、子供は一切の不満を表さなかったし、むしろ楽しんでいるかのようにも見えた。そしてまるで他者の手助けなんぞそもそも要らないのだと示すかの如く、一人で何もかもをこなしてしまう。

日常生活においては言うまでも無く、礼儀作法、勉学、武術然り。一を言えば十を理解し、何も言わずとも何かを為している彼は、やはり誰に教えられた訳でもないのに公爵子息としての役目をきちんと果たしていた。故に誰も文句を言えない。・・・否、そもそも言う勇気も有りはしないか。

まあとにかく、使用人に対し理不尽も言わない彼は、行動だけ見れば既に立派な公爵子息の鑑、尊敬に値する人物と言えた筈だ。だが実際はその瞳が、笑みが、長所を尽く覆い隠し他者に畏怖だけを与え、抱きかけた敬愛さえも容易く握りつぶしてしまう。


しかし母を除く例外として、“影” と呼ばれ闇で暗躍する人間達だけは、そんな彼に心酔し永劫の忠誠なんて物まで勝手に誓っているらしい。

俺は過去一度だけ、子供の足元に跪く黒装束の集団を目にした事があった。皆一様に熱の篭った目で自分より小さな子供を見上げ、命令される度にそれが至上の喜びでもあるかのように深く頭を垂れる。それはとても異様な光景であり、どこか神聖な儀式のようでもあった。

俺がただ呆然とそれらを見守る中、しばらくすると子供の一言を合図に、彼らは文字通り一瞬にして姿を消した。そしていつからこちらの存在に気付いていたのか、一人残った子供は迷うことなくすっと俺の方に視線を移して、まるで何事もなかったかのように 「どうかしたのか?」 などと聞いて来たのだ。促されるまま恐る恐る何をしていたのだと問えば、彼は薄っすらと笑い 「情報収集と、暗殺依頼の確認と割り振り」 と答えた。


―――本来はファブレ公爵の命令にのみ従う奴らだけど、数年前に頼み込んで所有権を譲渡してもらったんだ。どうせいずれは俺の手に入った物、別にその日がちょっと早くなったって問題はないだろ?


引き寄せられるように視線を向けた先にあったのは、ぞっとする程艶めいた表情。俺はこの時点でもう、こんな子供らしくない子供の存在が怖くて怖くて仕方が無かった。

数年前とは、一体彼が何歳の時の事なのか。何歳の時から、彼はそんな血生臭い闇に自ら身を浸していたのか。それを問う事も出来なくて、代わりにごくりと唾を嚥下する音がやけに大きく空気を震わせる。自分で出した音なのに、何故か俺はそれにすら恐怖を抱いた。

けれど子供は相も変わらぬ表情のまま。否、珍しくその瞳も俺の反応を楽しんでいるかのように歪んでいた。美しいのに、暗く暗く強い瞳。怖い、怖い。まるで俺が俺で無くなってしまうような感覚を与えるそれ。


―――怖いのか、俺が。いいよ、もっと怖がれ。ああ、でもガイラルディア・ガラン。勢い余って俺に危害を加えようとするなよ。あいつらは俺の事が大好きだから、即お前の頭と体は分裂を経験する羽目になるぞ。


冗談めいた、脅しと愉悦を含んだ声。それに気を取られ、一瞬何を言われたのか分からなかった。え、と思わず引き攣った笑いを浮かべながら聞き返すと、彼は身長上見上げているのにまるで見下すような冷たい目で、歌う様に続けたのだった。


―――ガイラルディア・ガラン。ガルディオス家の生き残り。よく聞けよ。お前の選択肢は三つだけ・・・今すぐペールと共にこの屋敷を出るか、今から父上を殺しに行って返り討ちにされるか、それとも俺と共に世界を滅ぼして、俺と共に数年後死ぬか。さあ、さあ、どれを選ぶ? ガイラルディア・ガラン、復讐を誓った哀れな子供。お前も復讐の道を選んだ時から、既に闇に生きる者に成り下がっているんだ。なあ、お前はそれでもまだ光にしがみ付くのか? それとも俺の様に、・・・否、俺ともっと深い闇に堕ちるか?


歌うように、惑わすように、毒すように紡がれる言の葉。

違う、俺は哀れなんかじゃない、俺はお前みたいに闇で生きてなんかない、俺はまだ、違う、俺は、俺は・・・。いつの間にか膝を付き、うわ言の様にそう繰り返す俺の頬を、子供がゆっくりと愛でるように撫で上げる。小さくて滑らかな手が頬の上で動く度、この身体はビクビクと震え、最早何に対して抱いているのかさえ分からない恐怖は否応無しに増していった。

・・・これまでにも子供から度々他愛ない “選択肢” を与れてはいたが、今回ほど選び難いそれを提示された事は無い。しかも今は恐怖から硬直し、真っ白になった頭で答えなど出せる筈も無く、俺の口は何を言おうとしているのか、ただ戦慄(わなな)く事しか出来なかった。

するといい加減焦れたらしく、子供の手がすっと頬から離れて行き、呆れたような吐息が吐き出されて。


―――もういい。ガイラルディア、今すぐこの屋敷を出て行け。俺も俺の影たちもお前を追いはしない。・・・お前にはそんな価値すら無いからな。


ああ、ああ。何て手酷い言葉なのか。そして何て恐ろしい言葉。呆れられた、見放されたのだ、俺は。


「い、嫌だ。嫌だ、捨てないで。捨てないでくれ、ルーク」


漸く、俺が何に恐怖していたのかがわかった。俺は孤独が怖かったのだ。もう大事な人たちから置いてけぼりにされるのなんて、耐えられない。

だから俺の同胞、俺の仲間、俺の主。どうか俺を置いていかないで。見捨てないで。一人にしないで。


無意識だった。俺は下ろされようとしていた小さな手を縋るように握り締め、その手に額を擦り付けながら何度も何度も懇願する。何て無様な姿なのか。そう思う余裕すら無く、この身体は未だ孤独の恐怖に震え続けていた。



そうして俺は、主を追って深みへと堕ちていった。

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