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※TOASSについて※
・連作の場合まずブログに仮UPし、ある程度話数が溜まってから1ページに纏め、Novelに本UPします。
(♪) が付いているSSは、まだNovelからリンクが繋がっていない (=本UPされていない) 作品です。
・単品はブログを経由せず、そのままNovelに掲載致しますのでご注意下さい。

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奪え、奪え、全てを憎め!3 ...20070531 * 他TOASS

ヴァン編。今までの反動か、微妙なギャグに。今度はちょい長め。

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奪え、奪え、全てを憎め!2 ...20070513 * 他TOASS

需要は少ないようですが、早速書き上げてしまいました続き。
次のヴァン編で完結予定です。相変わらず暗ぁー(汗

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奪え、奪え、全てを憎め!1 ...20070510 * 他TOASS

心底スレたルークの話。ちょっぴり珍しい逆行のタイミングと、それに対するルークの内心。
んー、後はヴァンとの接触編とガイとの接触編を書く・・・のかな。一応仮UPとしますが、もしかしたら書かないかもです。
読みてーむしろ読ませろ続き! とちょっとでも思われましたら、こっそり教えてやってください。喜んで書きますよ多分!(ぇ

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始まりは偽アッシュの満面の笑顔4<学園パラレル ...20070117 * 他TOASS

アッシュは怒っていた。

弟が自分と同じ顔を利用して物真似(いやあれはもう既に真似とは言わない)をしている事に・・・ではない。

実の弟に助けを求めながら(なんだ意外と頼っているのか)逃げ回る、目に優しいグリーンツインズの兄の方を、鬼ごっこと勘違いしているのか嬉々として追いかけているルーク(我弟ながら微笑ましい)。アッシュが怒っているのは、結果として心臓の弱い彼を走らせているシンクに対してだった。

シンク本人はかなり必死になって本気で恐怖し逃げ惑っているのだが、弟至上主義なブラコンアッシュにそんな事は関係ない。ルークの存在を知っているくせに未だ彼をアッシュと思い込み、混乱し続けている方が悪いのだ。


「屑が!!」


一目であの可愛い弟、ルークだとわからないとは嘆かわしい。そんな気持ちを隠そうともせず叫ぶと、何故かルークが瞬時に叫び返して来た。


「ならてめーは塵だ!!」


ルークに言ったのでは無いのにそう取られてしまったらしい(状況からしてそれが常識。普通逃げ回るシンクを罵るとは思わない)。柳眉を逆立てて吠える彼にアッシュは一瞬たじろぎながらも、「違ぇ!!」とまた叫び返した。否、叫び返そうとした、が。ちげ、とまで発音したところで強烈な衝撃を顎下に加えられ、全てを言う事ができなかったのだ。

しかも舌を思いっきり噛んでしまい、かなり痛い。抉るように打たれた拳(衝撃の正体)の持ち主がふふふふふと(表面上だけ)穏やかに笑っているところを見ると、どうやらタイミングを計られていたらしく。

エ音の発音中に強制閉口されるとこのような結果になるのは目に見えていただろうに、と態々文句を言ってやるよりも(そもそもわかってやっているのだし)、菩薩と言う化けの皮がどんどん剥がれて行ってるぞ、目に優しいグリーンツインズの弟の方(あえて名前は伏せておく)、と山に向かって大々的に叫びたくなってくる(きっとやまびこが賛同してくれるに違いない)。

だが結局何も言えずに口元を押さえて悶絶しているアッシュに、罵られた(誤解だが)ルークも毒気を抜かれたのか。はぁ、とため息を吐いて小さく「イオン凄ぇ」とだけ呟いていた。お願いだから弟よ、絶対に見習ったりしてこんな風にはならないでくれ。アッシュは切実にそう思ったが、それも口には出さない。何せ情け無い上に隣でふふふと穏やかそうに笑っている、菩薩の皮を被り直した修羅から妙な威圧感を感じていたからだ。


「ルーク、お久しぶりですね。僕を覚えてくれてましたか」
「勿論! 俺の始めて出来た友達だからな。忘れやしないさ」


そしてそのまま兄’sに「大丈夫か」の一言も掛けもせず、弟’sは駆け寄って穏やかに話し始めた。悶絶するアッシュは勿論、つい先ほどまで散々追い掛け回された挙句急に蚊帳の外に出され呆然としているシンク、始めから傍観者だが甚大な被害を被られ、状況に付いていけてないクラスメート達は、傍から見たら痴呆症の老人達と何も変わらないだろう。そんな中で普通に話しているルークとイオンはきっと、否絶対に神経が図太いを通り越して消滅しているに違いない。

しかし不意に、クラスメートの誰かが呟いた。その声はルークとイオンの声以外一切の音が消えた教室ではよく響いて、不思議なほど効果的に他のクラスメート達の耳へと吸収されていったのだ。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・アッシュが」
「ん?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・アッシュが・・・・・・・、・・・・・・・・・・・アッシュが、分裂した・・・・・・!?」


そこか。問題はそこなのか。というより分裂とは何だ分裂とは。卵の段階では確かに分裂もしたらしいが、こいつらが言っているのはその段階の事ではない。俺はゾウリムシかアメーバか。単細胞生物とでも言いたいのか。

「ぶんれつ!?」「分裂!」「そうか分裂か!!」と同じ言葉によって俄かに騒がしくなったクラスメート達(しかも何やら納得している)に、アッシュのむき出しになった額でいっそ見事なほどぶっとい血管が浮き上がった。危険を察知したルークとイオンは会話を中断してアッシュに注目し、彼が大きく息を吸ったのを見て素早く耳を塞ぐと言う判断を下したのだった。


「じゃかぁしいわ!! そこにいるのは俺の大事な片割れ、ふ・た・ご・の、弟だ!! 名前はルーク・フォン・ファブレ!! 今日からこのクラスの一員になる。仲良くしてやってくれ!!」


キレてもアッシュは何処までもお兄ちゃんだった。普通はSHRなどで担任の教師が言う言葉を、見事なまでに略奪しそれを疑問にも思っていない。このタイミングで言う可笑しさにも気付いていない。無意識に“双子”の部分を強調し、“喧しい”がヤクザ的に変換されている(本当にこいつは生徒の見本たる生徒会長か)が、やはり本人に自覚と言うものはまるでない。ここまで来るといっそ見事である。


「・・・・・・・・俺、微妙にこのクラスでやっていく自信ないかも。むしろアッシュと同じクラスってのがありえぬぇー」
「ならいっそ僕のクラスに来ますか? 隣ですし、ブラコン全開のアッシュや未だルークがルークだって事に気付いていないシンクといるよりいいと思いますよ」


まーそーかもなーと棒読みで返しつつ、少しだけ寂しそうにシンクを見たルーク。叫んで幾分か落ち着いた(興奮した闘牛のように鼻息が荒いが)アッシュも促されるようにグリーンツインズの兄の方を見ると、彼は何だか燃え尽きたように力なく座り込んでいた。

この様子からして被害者がどちらかは明白だったが、そこは弟至上主義なブラコンアッシュ。友人だと思っていた人物に気づいて貰えなかったルークの方が可哀想、ルークを悲しませた奴は万死に値する・・・と言う思考の持ち主である。殴って正気に戻してルークをルークと認識させてやろうとシンクに一歩近づくと、不意にイオンが口を開いた。


「あぁそう言えば。ルークと出会った日の夜、シンクは高熱で寝込んでしまい、その日の記憶を失ってしまったんです。その後6年9ヶ月と12日会っていなかった訳ですから、ルークをわからなくて当然かもしれませんね」


すみません、シンクの変わりに謝らせてください。そう申し訳なさそうに言った(本心からなのかそうでないのか今一判断できない)イオンだったが、それを早く言ってやれよとその場にいた誰もが思った。頭に血が上って闘牛と化したはずのアッシュですら思った(そうすればルークが悲しまずに済んだから)。

だがそんな理由があっては、シンクを殴って正気付かすのも何だか気が引ける。さてどう対処しようか、とちらりとルークを見ると、彼はしばらく予想外の理由に目を見開いていたが、次いでほんわりと笑って言ったのだ。


「そっか。・・・・・・でも今度は忘れられないよな★」


安心したような、けれど楽しそうな笑顔。我弟ながら可愛いぜ、とふっと笑ったアッシュだったが、傍から見ていたギンジは違う感想を抱いていた。もしかして、もしかしなくてもこのルークとやらも実は“黒い(しかも無自覚)”のかも。ギンジの背中を冷や汗のような物が流れては、制服に吸い込まれていった。




実は過去グリーンツインズとルークが顔を合わせたことがあるのは、たったの一度だけ。まぁその辺はまたいつか書く予定です。

壊れた何かは死だけが許しと呟いて、 ...20070103 * 他TOASS

「世界の為に死んでください、ルーク」


その言葉に、彼は笑った。花が綻ぶような、どんな些細な事にも喜ぶ、いつもの彼の笑顔だった。


「いいよ」
「「っ、ルーク!!」」


笑ったまま頷いた彼に、見ていると宣言した少女と、親友だと言う男が悲痛な声を上げる。彼ら二人だけではなかった。死んでくれと言った男も、元婚約者だった少女も、まだ幼くも強い少女も。

いつもと変わらない笑いを浮かべている彼に、愕然とした気持ちを隠せずにいたのだ。


「お前っ、自分が何を言っているのか分かっているのか!? ジェイドもジェイドだ!! そんな、そんな事・・・!!!」


顔を抑えてよろめいた親友だと言う男。尻切れになったのは、感情が追いつかないからか、それともそうする他無いのを知っているからか。


「わかってるよ。“世界の為に”、他に道が無いんだろ?」


本当は一人だけ、彼の代わりとなれる者もいた。彼のオリジナル、だがそのオリジナルは彼よりも力が強く、また“本物の”ルーク・フォン・ファブレで。

後に待つ世界規模の混乱、そしてローレライの解放を遂げるには、オリジナルの方が適切。能力の劣化したレプリカは、不適切。

自然な流れなのだ、その劣化レプリカたる彼の方が供物へと選ばされるのは。


「いんだよ。俺、別に」

「死ぬの、怖くないんだ。何でかな」

「・・・あぁそうだ。もう、何かそう言うの壊れたのかも」


否、壊されたのだ。予言の為に生まれ、国の為に死ぬ事を運命付けられ(だから愛情も与えられなかった)、今度は世界の為に死ねと言われて。

既に彼の精神は、何度も死を迎えていた。何よりも信頼し何よりも大事だった人に手酷く裏切られ、仲間達にも詰られ、見捨てられて。オリジナルは理不尽にも自分の代わりに責め苦を味わった彼を恨み、親友は彼を殺そうとして。

誰も彼を見ていない。誰も彼を信じてくれない。誰も、誰も、誰も。


少年は変わった。そうせざるを得なかった。でなくば誰も、少年を見てくれないから。信じてくれないから。誰も見てくれないからこそ唯一例外だった師に傾倒し、その結果何万もの人を殺してしまったのに。

一つの命を奪うだけでも悶々としていた彼を知っていたはずなのに、本意では無い大量虐殺を犯してしまったばかりの彼にただ辛く当たった仲間たち。

存在自体が偽者だと言われて、本物についていった仲間たち。

唯一残った彼女は、いつでも見限れると言い。待っていてくれた男は、親友だと言った男は、彼の心情を理解しようともしてくれなかった。

幼い少女の裏切りが判明した時。仲間たちは仕方の無い事だと彼女を慰めた。何が違ったのか、あの時の彼と。本意ではなく人を殺したのは一緒のはず。

確かに彼自身に責はあった。だが、それも仕方の無い環境ではなかったか。無知は本当に罪なのか。ただ責められる事を感受せねばならない事だったのか。


疑問が湧く度、少年の心にはヒビが入り、何度も砕けた。それでも自業自得なのだと懸命に前を見ようとして、何度も奈落に落とされて。

最終的に、何かが修復不可能なくらいに壊れてしまったのだ。


「いいんだよ、もう。本当に」


彼は笑う。いつもと同じ、花が綻ぶように。死を目の前に突きつけられても尚。


「もう、本当に・・・・・・・・・、こんな世界に、いたくないし」


それでも気付けば絆されてくれた仲間たちへ。君たちのいる世界を守ろう。だからどうか、この責め苦から解放してください。

泣いてください。己の罪と傲慢さを自覚して。


仲間達と各国の首脳達。誰もが言葉を失い愕然とルークを凝視する中。

ルークはただ、何もかもを享受し、何もかもを捨て去り拒み続ける笑顔を、ただ。

ただ、浮かべ続けていた。



それはきっと、ささやかな復讐だった。

始まりは偽アッシュの満面の笑顔3<学園パラレル ...20061228 * 他TOASS

アッシュの弟は病弱な母に似て、体が弱かった。特に心臓に欠陥を抱え、10になった時は生死の境を彷徨い。一時は記憶の混濁症状まで見られたが、現在は既に収まっている。・・・・・・心臓の欠陥だけは、相変わらずだったが。

だから彼はつい最近まで、通常の学校に通う事ができずにいた。勉強は一流の家庭教師とアッシュが見ていたから学力は同程度だが、長時間の運動に耐えられない。故に学校に行って沢山友達をつくり、クラスメートと共に勉強をしてみたいと何度懇願されても、弟を溺愛している両親がそれを許すはずはなかった。

だが、漸く。世界的な名医であり弟の主治医でもあるジェイド・カーティスが、体の成長により心筋も多少は強くなったからまぁ大丈夫でしょうとか何とか(アッシュはジェイドがこれ以上と無く嫌いなので、弟の為にしっかり聞きはしたが不必要だと判断した事は片っ端から忘れてやった)随分曖昧な事を言いながらも、それを感じさせない話術で巧みに弟を学校へ通わせるよう勧めてきたので、結局渋々にだが両親からもその許可が下りたのだ。


弟は漸く念願が叶った! とベットの上で盛大にガッツポーズを取っていた(バックミュージックに勝利のファンファーレが聞こえたような気もする)。その時の喜び様と言ったら、アッシュがチャンスとばかりにその体を抱きしめても、殴りもせずに抱き返してきたくらいだ(それ以上の事をしようとしたら流石に蹴り飛ばされたが)。

腹立たしい事にその後ジェイドにまで抱きついていた(しかも腰を撫でられた事にあの弟は何故か気付いていなかった。畜生、これが経験の差か)が、それはともかくアッシュとしては本当に大丈夫なのかと信用も楽観視もできないし、正直今まで通り学校なんぞ通わずとも良いと未だに思っている(元々彼は両親寄りの思考の持ち主だ)。

だがああまで喜ぶ弟を地に突き落すこともできず、仕方が無いので常に目の届く場所に置くことで妥協した。つまり、同じ学校同じ教室同じ選択教科しかも常に全力で弟の隣の席をキープするという決意をし、王族であり公爵子息である自分の地位と権力を最大限活用して、最終的にその権利を学校側からもぎ取ったのである。

お兄ちゃんは頑張ったぞ。その言葉と共に得た権利について弟に報告すると、何故か真っ青になって殴られた。人の事は言えないが、手の早い奴だ。


そんなこんなで迎えた登校初日。本当は一緒に登校してやりたかったのだが、生徒会がある上サボったら副会長であるイオンが怖い。そのイオンは弟の事情を知っている(あいつの数少ない友達の一人だから)ので、事前に説明さえしておけば大丈夫だったかもしれないが、教えてしまうのが勿体無く思えて結局言えなかったのである。

しかし職員にでも聞いたのか早々に知られ(しかもアッシュの登校前に)、下駄箱で待ち伏せされた挙句顔を見合わせた途端笑顔で足を踏まれた。曰く「事前に教えてくれていたらプレゼントとか用意していたのに何てことしてくれやがるんですか。勿論プレゼントなんか用意しなくてもルークは僕と会うだけで喜んでくれるでしょうけど、それでも再会を祝したいと思う僕の気持ちを貴方は無碍にしたんですよ。何で教えてくれなかったんですか。独占欲? はっ、馬鹿らしい。貴方毎日ルークと会ってるんでしょう? 6年9ヶ月と12日もの間会うことを許されなかった僕の身になれってんだアホンダラ。おい聞いてんのかよオカメインコ」、らしい。

口調がシンク化してるとか言う前に、誰だこいつを菩薩のような性格をしていると言い出した奴は。他人の評価は当てにならない。話している間ずっと笑顔でアッシュの足をぐりぐりと踏み続けたイオンの、いったい何処が菩薩だと言うのか。

その後もイオンに愚痴愚痴(というよりもネチネチ)責められながら生徒会の仕事を終え、そろそろ来るかなと職員室前(事前に真っ直ぐここに来るよう言っておいた)で待機していたのだが。


「遅くないですか? もしかして道端で倒れたりとかしてませんか? 貴方達双子なんですから都合よくテレパシーとか送ってみてくださいよ」
「・・・・・・・・・・・・いや、普通に歩いてる。特に苦しがっている様子もない」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・本当にテレパシーを使えるんですか」


呆然としたイオンの声に、そう言えば彼には自分達の特別な繋がりを教えていなかったな、とアッシュはぼんやりと思った。イオンに限らず誰にも知られないよう、小さい頃から2人で必死に隠していたからというのもあるが(もう今は隠す気力も失せた)。

適当に言葉を濁していると、短気でキレやすいアッシュの性格を考慮してか、聡明なイオンはそれ以上の追及を控えたようだ。


「下駄箱まで迎えに行ったらどうですか?」
「・・・・・・・・・・・・そこまですると過保護だと怒られる」


職員室で待つというのもギリギリだった。弟は甘える事も甘やかされる事も得意ではないのだ。そこが可愛いのだけれども。

ちなみに迷う心配は全くしていない。何せ温室(むしろ病室)育ちでもアッシュの片割れだ、頭が良い上今回は随分張り切って学校案内(地図つき)や学生名簿(生徒会長権限で写真付きの奴を無断拝借した)を見ていたので、校舎の構図はもちろん全校生徒の顔と名前だって弟は知っているはず。万が一自力で辿り着けなかったとしても、適当に誰か捕まえてアッシュの真似でもしつつ上手く誘導して職員室に辿り着けるだろう。

何故温室(病室)育ちの弟がそんな事をできるのかは、聞かないでやって欲しい。あえて言うならアッシュに負けず劣らず弟にべったりな鬼畜眼鏡のせいである。

ついでにあの胡散臭い笑顔を思い出してしまい、無意味に脱力してしまった時だった。


『なーアッシュ。お前生徒会長なんだって?』
『ん? あぁ。誰かに聞いたのか?』
『うん、ギンジって奴。お前のクラスメートだよな? 今隣にいるよ。あ、シンク(たぶん)発見!!』


つーかお前今何処に居やがる。朝はイオンに引きづられクラスメートの誰よりも早く登校し、それからずっと教室で寝こけているはずのシンク。(たぶん)と付いたのは、きっと伏せていて顔が隠れているからだろう。イオンと間違えないのは彼が外で寝ない(というか猫背になって机に突っ伏す事事態がありえない)事を知っている為か。


『おいこら、俺は登校したらまず職員室まで来いと言っていたはずだが・・・・・・・・・?』


風向きが怪しくなったと判断してか、そこで通信(今までの会話は勿論脳内通信(=テレパシー)だ)が遮断されてしまった。同時に何やら嫌な予感もしてきたので、さっさと教室まで迎えに行く事に決める。


「イオン、俺のクラスに行くぞ」
「え!?」
「あの馬鹿先にそっちに行きやがった」


そんなこんなで足早に向かったら、そこは既にカオスと化していたのだった。



→4

始まりは偽アッシュの満面の笑顔2<学園パラレル ...20061224 * 他TOASS

それは、『アッシュ・フォン・ファブレ』という人物を知らない者が見れば、素直に「あぁ綺麗だな」「可愛いな」「癒えるな」「萌えるな」などという好ましい(?)感想を抱けただろう、純粋で何の含みもない笑顔。


教室の入り口であるドアに背中が当たった音で、ギンジは自分が無意識に後ずさっていた事に気付いた。それほど、アッシュの笑顔は衝撃的だったのだ。



嬉しそう、という表現が一番近いのだろうか、これは。笑うにしても眉間に皺を寄せたまま、口元を歪めるだけの普段のアッシュからは、考えられない表情。


あぁこいつこんな表情もできたんだな、などと穏やかな感想さえも、残念ながら抱けそうにない。感じるのは得体の知れない物に対する恐怖だけだった(失礼だとかそういう理性さえも働かない)。



しかも、アッシュの不可思議な暴挙はそれだけでは納まらなかった。



「シンク!」



歓喜が声だけで伝わる。が、ギンジはそれをとっさに宇宙語だと解釈した。脳みそが翻訳を拒否している。


教室で屯っていたクラスメート達も、同じように何を言われたのかわからないとでも言いたげな表情で、会話を止めてアッシュを凝視。


呼ばれた対象と思わしきシンクはと言えば、驚くべき勢いで顔を上げたかと思うと、入り口に立っているアッシュを、この世の終わりに直面したかのような表情で見ていたのだった。


流石にそのすさまじい形相で自分の異常さに気付いたのか、アッシュは笑顔を引っ込めて一瞬驚いたように身をすくませた(あのアッシュが!)が、瞬時に開き直って(ギンジには何か悪戯を考え付いた子供の表情のようにも思えた)ばっと両手を広げて見せたのだ。



「シンク! 会いたかった!」



そしてまるで長年会っていなかった恋人に対するかのように、笑顔で駆け寄る。そう、笑顔。またあの、まるで花が綻ぶ様なと書いて悪夢再びと読む表情。


婚約者のナタリア殿下にさえ見せた事がないのではと言う満面の笑みを向けられ、駆け寄られたシンクは悲鳴のような声を上げた。


何だコレあんた何何か変な物でも食ったの嫌だ助けてイオーン!!!! とプライドも体裁もかなぐり捨てて逃げ惑いながら、あまり仲がよくないはずの双子の弟に助けまで求めている。(ギンジはちょっとだけシンクのその様子にときめいてしまった。ツンデレって凄い)



勿論そんな反応を取ったのはシンクだけではない。ありえない光景を目にしてしまった生徒たちは皆、例外なく一様に顔を蒼くして身を強張らせていた。天変地異の前触れかと無駄に周囲を警戒しだす者や、震えながら避難し始める者までいる。


だがそれも仕方のないこと。この変わり様は余りにも恐ろしすぎる。まるで海で発見したツチノコが実は羽毛で出来たネッシーだったかのよう。意味がわからない。



「逃げるなよシーンクー♪ 俺だ、アッシュだぞー♪」



傍から見ていたギンジは確信した。アレはアッシュではない。断じて違う。だって語尾に音符がついている・・・つまり上がり口調。ぶっちゃけ無理に声低くしてない? と突っ込みたくなる“あの”無駄にプライドが高く格好付けのアッシュでは、ありえない口調だった。


しかもあの朴念仁の堅物は、からかわれる事はあっても誰かをからかう事はない。やらないのではない、できないのである。


なのに今目の前にいるアッシュはやけに楽しそうに笑いながら、教室内を「イオーン!! 助けてイオーン!!!」と普段からは考えられないほど乱れて叫びながら逃げるシンクを追いかけているのだ。


教室内は既にカオスと表現するのが相応しい状態だった。急変した美貌の王族と、逃げ惑う少年(少女に見えない事もない)。戸惑うどころか意識を飛ばしかねない勢いで混乱する観衆。このような状況を正にカオス、混沌と言うのであろう。



ギンジが教室の入り口でぼんやりと(混乱が飽和したのか、それとも予兆があったので耐性ができていたのか)そんな事を思っていると、不意に誰かの手が肩に置かれた。


・・・・・・訂正、置かれたなんて物ではない、骨をも砕きかねない勢いで掴まれている。



「いだだだだだだだ、誰だよ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、っ!!?」



ギンジは声にならない悲鳴を上げた。何故ならば振り返った先には、紅い長髪を風も無いのに波立たせ、背景に地獄の釜を背負った修羅(絶対にこの世のものではない)が立っていたのだから。


恐怖に引きつった顔を向け、無意識にホールドアップしながらも、ギンジは頭の片隅で「デコのテカリ具合が今日も素晴らしいっす」と呟いた。そして問答無用で殴られる。どうやら口に出ていたらしい。



「・・・・・・・・・・・・ぶっ殺す」



次に、修羅はこれ以上と無く低い声でそう呟いた。誰を、とは聞けない。もし対象が自分だったらと思うと、肝が冷えるを通り越して氷結しただろうから(そして最終的には目の前の赤鬼に砕かれる)。



「ふふふ、楽しそうですね」



ちなみにギンジはその穏やかな声が聞こえるまで、修羅の隣にイオンがいる事に気付かなかった。生徒会副会長である彼は、隣の修羅とは違って誰からも親しまれ、菩薩のような性格をしているのが周知の事実。


だがギンジはその認識をたった今改める事になった。懸命に助けを求めてくる兄をしっかりと目で追っているくせに、イオンは穏やかな笑みを絶やしもさず、暴走しそうな隣の修羅の服の端を握り、食い止めているのだ。


客観的に見て隣の修羅を解き放てば、少なくとも双子のお兄さんは助かるのでは・・・とギンジは思ったが、懸命にも今度は口に出さなかった。口にしたら最後、イオンのイイ笑顔に押しつぶされてしまいそうだったから。



「でもルークが元気そうで安心しました。もう完治したんですか?」



しかし不意に呟かれたイオンのその疑問に、修羅のようだった“本物の”アッシュがはっと息を呑んだ。




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